活用された方の声
VOICE

1933年(昭和8年)創業で来年90周年を迎えられるミナミダ様。
タイ・ベトナム・メキシコに海外工場を構えており、現地企業との取引は年々伸展しています。
そんなグローバルに成長し続けるミナミダ様が初めての自社商品「キャンプ用解凍プレート」のためにどのように補助金を活用されたのか、お伺いしました。
↑展示された製品と大分工場リアルタイム配信の映像が流れるディスプレイ
―貴社の業種内容、活動について簡単に教えて頂けますでしょうか?
当社は金属に熱を加えず常温のまま圧力を加えて、変形させながら成形をおこなう加工方法「冷間鍛造」を用いた自動車用シャフト、ボルト、ナットの製造を得意としています。年間およそ200社とのお取引があり、売上の80%が自動車関係です。
―今回の補助金を知り、活用されるきっかけを教えて頂けますでしょうか?
コロナ禍を機に、世代交代後の会社について真剣に考えるようになったことが大きいです。世代交代後も会社が繁栄していくためには「100年企業」を目指さなければならないと考えるようになりました。私にとって100年企業とは「優秀な社員が絶えず入ってくる会社」なんですよ。
そのような会社の3大目標として、1.理念が浸透し、目標が一致している 2.社員がやりがいを感じチャレンジできる、称賛される3.外部環境に左右されない。利益率が高い、商材、拠点が分散されている ということだと考えております。
この3大目標を達成するために自社製品が必要であると考え、そのために資金が必要だったので補助金を活用させていただきました。
↑創立当時(昭和8年)の写真
社員のやりがいが自身のやりがい
―補助金を活用して行われた事業が、初めての自社製品である「キャンプ用解凍プレート」ということで、開発にいたった理由を教えていただけますでしょうか?
解凍プレートは自分自身がコロナを機にキャンプを始めたということと、工場長がヒートシンク(吸収した熱を空気中に放熱することで冷却を行う部品のこと。自動車やパソコンに使われることが多い)をキャンプの際に肉の解凍プレートとして使っていたのを見たことがきっかけです。ここについては私が話すよりも工場長が話したほうがいいかもしれません。
解凍プレートについては工場長の発案なので私が主役じゃなくていいと思っています。社員がやりがいを感じてくれることが私のやりがいみたいなところがあるので(笑)。
―キャンプをされる中で自社の商品としてキャンプ用品を開発できないかと考えられたということなのでしょうか?
「冷凍した肉をそのまま焼くと、臭くて子どもが嫌うんです。そのため、解凍するために武骨なアルミのブロックを削り出したものの上で解凍していました。
何も使わずに解凍しようと思うとドリップ(旨味や栄養が含まれる水分)が出てグチャッとなってしまいます。
しかしアルミのプレートに乗せると、ドリップが少なく早く解凍することができます。
この解凍プレートは周りの温度に合わせようとするので吸熱します。
プレート全体の熱電動率(熱伝導による熱の移動のしやすさ)が高く、空気に触れている面積も広いので塊のものより放熱をして、なじませる力が強いんです」(工場長談)
↑解凍プレートを手に取り説明する工場長
↑キャンプ用解凍プレート
工場長の出してくれたアイデアはとても良いと思ったのですが、ヒートシンクそのままだと衛生的にも見た目的にも良くありませんし、何より大きすぎました。
そこでうちの技術が生かせるのではないかと考え、開発を始めました。
―開発まで、どのような点に苦労されましたか?
現在まだ試作段階なのですが、想定している形状が出なかったり、使用者の方のために「より丸みを帯びている方がいいのではないか」など考え、金型を作り替えたりしています。また、BtoBでは気にならないレベルのバリや圧痕など、見た目の改善を今も努力しております。
表面処理を外注する業者さんも価格とロット数などの関係でなかなか見つからず、ようやく見つけることができたのですが…苦労しました。
―このプレートの今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?
11月にクラウドファンディングサイトに出品、掲載、そして1月から正式に販売開始を予定としており、2月にはギフトショーにも出展したいと考えております。
出展していくなかで、反応が良ければ大型タイプを製造することも視野に入れております。
実は、本来はもう少し大きいものを作ろうと考えていました。
今300tプレスで作成しているのですが、その一つ上がうちの会社の場合800tプレスなので金型に何百万とかかってしまいます。そのため市場の流れを見てから大型のものも作ってみたいと考えています。
あと、これはキャンプっぽいデザインにしているんですが目的を変えて使用していただくことも可能だと考えています。
例えばチョコレートショップで、陳列棚の中にこれを入れてもらえればチョコレートを保冷してくれます。このように、用途を変えて売り出していくこともできます。
社員の自主性を尊重
―補助金を実際に活用してみた結果、よかったことについて教えてください。
一番は社員が自主的にチャレンジするようになったことですね。
この冷却プレートを作ってから、社員が「チェス作ってみました!」や「けん玉作ってみました!」など自主的に作ってくるようになりました。
私はチェスをしないのでこれが本当にチェスとして機能するのかわからないんですがね(笑)。
チェスやけん玉などは会社の経費で作っているんですが、帽子は社員たちが自主的にお金を出し合って作ったんです。
このように社員らが会社の新しい商品を作ってみようと各々好きなように行動しているのを見るとある意味理念浸透に役立ってくれたと感じます!
↑社員が自発的に作ったという帽子。
そばにあるのは同じく社員が作ったチェスとけん玉。
あとは自社商品事業を取り組み始めたことによって、そういったことに興味を抱いてくれる学生の方がインターンに来てくださったり、この加工技術を使ったBtoBの自動車部品の問い合わせがあったということです。
―補助金を活用する点で「こうしてほしい」と思うことについて教えてください。
実際に販売・ブランディングをしていくためには、レベルの高いECサイト・ホームページが必要です。そのためにもう少し費用上限を上げてほしいと感じました。
また、既存事業のHPも旧態依然であると一貫性が取れないので、大幅に変更する必要があると思います。
これに対して現在の20万円では難しいので、条件を設けるなどして上限撤廃していただけると助かります(笑)。
ニッチから定番へ
―会社全体の今後の展望についてお聞かせください。
これからの展望はもともと言っている「100年100億」を変えずに、突き進んでいくことです。
会社としては認知向上、制度設備でしたり、FactorISM(ファクトリズム:八尾市を中心とした、町工場でのものづくりの現場を体験・体感してもらうイベント)に向けても進めています。
加えてこの本社は築60年以上経つので劣化していますし、オフィスというよりも事務所のような感じなので、とりあえず一階の休憩室をFactorISMまでにリノベーションをしたいと考えています。
そこを基準に上の階もリノベーションしていく予定です。
事業としては部品事業のほうは売上100億のうちの70億、自社商品は残りの30億を目標にしております。
あとは自動車部品のEV対応ですとか、現在タイ(2010年に設立)とメキシコ(2016年に設立)に工場があるんですが、いずれアメリカとインドにも拠点を出したいと考えております。
また、熱処理・表面処理を一部内製化に切り替えたり、自動車以外の機器の拡販をしていきたいです。
自社商品はとりあえず当面は売れるBtoCが出るまで開発を継続していきます。
キャンプ用解凍プレートが自社製品第1弾といっても実際にまだ販売をしていないので、第一弾とは言えないです。
しいて言うなら第0弾みたいなものですね。
徐々にニッチな商品から定番商品への移行をしていきたいと考えています。
当然ですがBtoCの商品は移り変わりが激しいですし、ロングランするのは従来からあるものばかりだと思います。
そんななかでこのような工業的なものは難しいと思っています。
ですので、やはりBtoBの自社商品もしくはサービスをやりたいと思っています。
それはロボットを作るのかどうなるのか分からないのですが、今は本業の生産効率アップの為にロボットのプログラムやティーチングなどは外部に頼らず自分たちで行ったり、自動化の装置を作ったりしているのでそのあたりを将来、商品もしくはサービスに展開できると考えております。
↑シャッターの奥に見える工場内部。
中では多国籍な社員が言葉の壁を越え、力を合わせて作業している。
―補助金を検討されている方へのアドバイスや一言、メッセージを頂けますでしょうか。
迷っているならとりあえずやってみてほしいです。
動き出してみればさまざまな出会いがあり、学びがあります。
失敗してもデメリットは何もないと思うのでぜひチャレンジしてみてほしいです!
Profile

長尺ボルトを得意していて、売上の80%が自動車向け。
お客様からのあらゆるご要望にお応えするVA・VE提案を積極的に行い、コストダウンを実現。