活用された方の声
VOICE


老舗飲食店が打ち出した「また戻ってきてもらうため」の新事業
株式会社高砂
小山奉紀さん
  • Facebook
  • Twitter

八尾市南太子堂で飲食店を経営されている株式会社高砂さま。

「和食も洋食も楽しめる家族向けレストラン」として、地元のみなさんに愛されています。

来年、この地に店を構えて100年を迎える老舗のレストランでありながら、次々と新たな事業にチャレンジされている株式会社高砂さまがどのように補助金を活用されたのか、詳しくお聞きしました。

お客様の用途によって使い分けができるレストラン

―大通りに面した、とても大きな飲食店ですね!こちらは料亭でしょうか? 

「和食も洋食も楽しめる家族向けレストラン」としてやらせてもらっております。レストランの横にはカフェ、揚げ物のテイクアウトのお店も併設しています。ランチ、ディナー、居酒屋、カフェ、法事や宴会、お客様の用途によって使い分けていただけるレストランになっております。

 

大正13年に現在の場所の一角で、テーブル二卓の小さな『うどん屋』を始め、それから20年ほどたった後、二代目が『うどん屋+寿司・仕出しの店』へと進化させ、現在の大きさになったのは、三代目が跡を継いだ昭和53年です。高度経済成長期のファミレスブームを予見した三代目は、数年間の料理修行を経て和食だけでなく、洋食の技術を身につけ、大々的な改築を行ったのち、『うどん屋+寿司・仕出し+洋食の店』として『れすとらんニュー高砂』を開店しました。

原材料からのてづくりにこだわり、『専門店品質の料理をファミレス形態で提供する店』として現在まで洋食だけでも40年余り、寿司・仕出しでは70年余り、うどんに至っては100年近くに渡って地域の皆さんに愛していただいております。

↑市内幹線道路である国道25線沿いでひときわ目を引く老舗レストラン「ニュー高砂」

緊急事態宣言発令後すぐ始めた「NO!密、テイクアウト弁当」

―100年近い歴史があるんですね!

そんな老舗の高砂さまが、今回八尾市の補助金を使われたのは、どんな経緯があったのでしょうか?

やっぱりコロナ渦です。我々飲食店は本当に大打撃でした。

あまりに急であまりに未曾有な事態でしたので、打つ手をじっくり考える時間もありませんでした。

初めての緊急事態宣言が出された時、即座に弁当メニューの開発をしテイクアウト弁当の販売を始めました。店の外で妻が「NO密!テイクアウト弁当」という看板を持ち、毎日毎日外に出て周囲を通る人たちにその看板を掲げてくれていました。テイクアウト弁当のチラシも作成し、ポスティングも繰り返し行いました。また、カフェスペースの一部を改装し、揚げ物専門のテイクアウトも始めました。

このようなテイクアウト弁当やテイクアウト専門の揚げ物のお店を展開しましたが、コロナ渦による売り上げの激減を止めるにはまだ及びません。

また次の打開策を打ち出す必要がありました。しかし、打開策を打ち出すにもお金がかかります。その時に、八尾市の意欲ある補助金のことを知り、打開策にその補助金が使えるのではないかと思いました。

高砂の強みである「質の高い料理」。急速冷凍し、自動販売機で販売!

新たな売り上げにつながるものを模索していた時に、テレビで「急速冷凍によって料理の品質が維持できる」という紹介を見て、当店自慢の料理を冷凍で販売することができれば、さまざまなリスクを回避して売り上げをプラスできると考えました。常温で料理の販売をしようとすれば、何種類もの材料を仕入れて余らせてしまうリスク、作っておいていた商品の売り残りのリスク、作り置き状態の時間経過による色や食感の劣化のリスク、時間経過による細菌繁殖のリスクがあります。それらのリスクを回避でき、しかもアイドルタイムや閉店後に作ることができるので、冷凍によるメリットは大きいと考えました。

自動販売機の導入については、非対面・非接触で24時間販売できるメリットを考えました。現状の弁当販売では、当然ながら食べたいときに購入しに来られますので、店内に来客が多くなる時間帯と同時間帯になります。場合によっては、空席を待つお客様の間を縫って、店頭でお渡しする事にもなりかねません。そのような混雑時の感染リスクを回避するために、自動販売機は最適であると考えました。実店舗に1台、そしてJR八尾駅南口に1台、計2台の設置をしました。JR八尾駅南口に設置した自販機に八尾市の補助金を使わせていただきました。 

今回の冷凍自販機を活用した自社総菜販売の新規事業は、アイドルタイムや営業時間外に生産でき、また営業時間外にも販売できることでコロナ増を最小限に抑えながら売り上げを積み上げることができるため、収益性が高くコロナに欠損した宴会・法事の補填として大きく寄与します。

↑補助金を利用し、JR八尾駅南側に導入した自販機。(写真中央)

「電車で帰ってきた単身者」をメインターゲットとし、ごはんを別に炊く必要がなく「購入→温め」のみのプロセスで食べることができる商品ラインナップとした。

家族・社員一丸、ONE TEAMとなって高砂の品質を保持

―2台の自販機を見てきたのですが、当たり付きもあるんですね!面白いです!

コロナ禍の殺伐とした雰囲気の中、少しでも楽しいことができないかと思い、社員みんなでアイデアを出し合い、当たり付きの自販機にしました。店内飲食が10%オフになる当たり券です。それまで馴染み、行きつけにしてくださっていた人、初めて自販機でお弁当を買ってくれる人に外食の楽しみを忘れてほしくない、今はまだ前のように利用できなくても、高砂のことを忘れないでほしい、お店に来てもらいたいという想いからです。

―お店の前にある自販機はすぐ在庫状況の確認ができると思うのですが、JR八尾駅南側に設置されている自販機の在庫状況は、どう確認されているんでしょうか?

JR八尾駅南側は、娘の通学経路にあたりますので、毎日娘が在庫状況を確認してくれます。「お父さん、〇〇のお弁当が売り切れていたよ」と連絡が入れば、すぐさま補充に行きます。実際、娘はうちの店でアルバイトもしてくれています。

自分も小学生の時から皿洗い、中学で下ごしらえを手伝うようになり、高校からはホールをやっていました。先代からの家族経営ではありますが、娘には強制したわけでもなく、でも自発的に手伝ってくれていて、ありがたいですし、嬉しいですね。

機会損失の減少、広告宣伝効果、そしてスタッフの意識向上にも繋がった

―八尾市の補助金を利用し「自動販売機」を導入され、どのような効果がありましたか?

実店舗への好影響が3点もあったことです。

まずは機会損失の減少です。店舗だけの営業では、残してしまうことを警戒して少な目に準備をし、予想外の来客があった時に売り切れてしまうこともありましたが、余りそうになった段階で、即座に自販機用に切り替えることができ、食材が新鮮なままお弁当を作ることができます。

二つ目は広告宣伝効果があったことです。自販機の空白スペースに実店舗の季節に応じたお知らせを貼りだしています。駅前への設置ですから、多くの人目に付きます。また、飲料専用自販機を設置している店舗さんからも、「高砂さんの自販機を置いてみたい」と問合せいただき、認知の拡がりを実感しています。

三つめは、スタッフの意識向上です。コロナの影響による客数減で、ややもすればスタッフの志気が下がりがちになりますが、本事業を取り入れることで「売れるメニューを考えよう」「次はこんな商品を入れてみよう」といった意識が芽生え、モチベーションアップに繋がっています。これは思わぬ副産物でした。

↑自販機の空白スペースを利用して、店舗からのお知らせを掲示

 

またお店に多くの笑顔が戻る、そう遠くない未来に向けて

―高砂さまの今後の展望をお聞かせ願えますか?

 今回、八尾市の補助金を利用して、JR八尾駅南口に設置しましたが、北口付近や、久宝寺駅エリア、近鉄八尾駅エリア、更にはドラッグストア駐車場などへも拡大していきたいと考えています。長年営業を続けたことで得られた安心感の及ぶ範囲内、言い換えれば「高砂の商品なら安心だ」と思ってもらえるエリアに絞って、「外食することなく、いつでも好きな時に、自宅で高砂の品質」を提供できる事業として展開していければと思います。でもそれは、あくまでもまた高砂へ足を運んでもらうための一つのツールにすぎません。気兼ねなく、好きな時に、また高砂でランチ、ディナー、お酒やカフェ、宴会を大切な人たちとおしゃべりしながらゆっくり楽しんでいただける日、そう遠くない未来のために、日々、色んな展開、発信をしていきたいと思っています。

Profile

株式会社高砂
小山奉紀さん
和食・寿司の職人、ホテルの料理長経験者から技術を学び、現在は料理長と経営部門を兼務し、メニュー開発から、新規事業の立ち上げまでを行う。

https://takasago-honten.co.jp/