活用された方の声
VOICE

平成2年創業。自動車、航空機、医療機器、電子部品などの製造工程に欠かせない超硬工具の製作販売を行い、 日本国内はもとより東南アジアや欧米など、世界各国の超精密加工をサポートされている坂本精工株式会社様が、どのように補助金を活用されたのか、詳しくお聞きしました。
―貴社の業種内容、活動について簡単に教えて頂けますでしょうか?
当社はお客様の要望される超硬製の特殊形状の穴あけ工具の製造販売を行っており、半導体製造装置や、航空部品、自動車部品など、あらゆる製造工程で当社の刃具をお使いいただいています。 切削工具を設計から最終検査まで請け負っており、一般的なドリルや※リーマ以外にも自動車・航空機・医療機器・電子部品等の加工に使用される「小径バニシングドリル」等を扱っています。
(※リーマ…あらかじめドリルなどによってあけられた下穴を、要求される精度で所定の寸法、形状、そして良好な仕上げ面に加工するために用いられる切削工具)
厳しい指摘も多々受けた
―今回の補助金を知り、活用されるきっかけを教えて頂けますでしょうか?
「※ものづくり補助金」の相談をするために八尾の商工会議所に行き、そこで八尾市立中小企業サポートセンターを紹介していただいたことがきっかけです。 補助金以外にも技術課題の解決に取り組んでくれたり、販路開拓の相談にも乗ってくれたり、こんな機関があるのかとビックリしました。 サポートセンターで支援を受ける中、厳しい意見、ご指摘もたくさん頂戴しました。やはり企業経営というのはいかに大変であるかということも痛感しました。しかし、指摘を受ける部分が喫緊の改善点であることも明白で、ひたすらその改善に努めました。
(※ものづくり補助金…経済産業省が行う、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金)
現場を見た時、工具以外の問題点があった
―補助金を活用して行われた事業が、「業界初の※刃具トータルソリューション事業に向けたブラスト機導入」とのことですが、導入の経緯を教えていただけますか?
日々の営業活動の際に、お客様へのヒアリングを行っているのですが、工具に関する問題はもちろん、工具以外の問題点が多く抽出されました。 その際に多く聞かれたのが、工具の管理が大変だということでした。 お客様は多いところで500~2,000点といった膨大な数の工具を1社で保有されています。でも実際に使用する工具はその20%以下です。 そして本数は今後も増えていきます。しかし、管理できる技術者は減っています。加工不良を出さないためにも常に全数の状態管理が必要となりますし、工具の状態管理には専任の熟練者も必要です。かといって在庫管理の自動化となると予想外の摩耗や短寿命、突発破損といったイレギュラーも多く、難しいのが現状です。 これらの課題を解決したいと思い、製造→販売で終わるのではなく、その先、“刃具管理の見える化”をすべく「“業界初の刃具トータルソリューション事業”に向けたブラスト機導入」をすることにしました。
(※刃具…製品加工時に使用する道具(ドリルなど)のこと)
(※トータルソリューション…クライアント企業の抱える個々の問題を解決するだけでなく、その企業のシステム全体を対象として、総合的に問題を解決するサービス)
(※ブラスト機…物質に研磨剤を高圧、高速で吹き付けることで、物質の表面状態や組成を変化させる機械)
寿命の長い工具を開発
―なるほど。製造→提供で終わるのではなく、その先、在庫管理まで含めた事業展開なんですね!トータルソリューションに向けたブラスト機の導入が、どのような効果をもたらすのでしょうか?
はい、先ほど申し上げたように、工具の管理というのはなかなか難しく、これらの課題解決のためには、まず工具寿命を延ばすことが大事と考えます。 今回導入したブラスト機では、耐久性の向上を目的とした「ラップ処理」を行います。ゴム性の粒子とダイアモンド粒子をミックスさせた粉末をエアノズルにより排出し、刃先に吹きかけることで、刃表面の凸凹を減らします。加工面が研磨なみの面粗度に仕上げ、工具使用時の摩擦を減少させることで工具の耐久性をアップします。ドリルやリーマでは、テスト実績で工具寿命が平均1.2倍の成果を上げています。 更に、簡単な操作で短時間に処理が可能です。刃具1本あたり1~2分程度でラップ処理が可能です。砥粒径1μmの研磨剤を射出することで刃物を鏡面に仕上げます。 今回導入する機械で使用する粉末では、含水量の調整が不要であり、作業効率が非常に良く、出来上がりにムラがないのが特徴です。 鏡面仕上げ後では見た目はあまり変化を感じられないかもしれませんが、工具使用後の溶着が減ります。溶着が減るということは、工具寿命が延びます。寿命が安定することで破損や摩耗等の突発破損が減少し、刃具管理の精度が向上します。 また、外注時に比べて内製は費用を大幅に削減できますし、納期の大幅短縮(4日→即日出荷)にも繋がりました。
↑意欲ある補助金で導入したブラスト機
特殊な加工により、長寿命の工具を作ることができる
“刃具トータルソリューション”更なる精度の向上
―(補助金事業について)今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?
引き続き、刃具の品質向上と、刃具管理の見える化であるトータルソリューション精度の向上を考えていて、今年度の意欲補助金では、製作した工具や工具ケースにマーキングするためのレーザーマーカーの導入を申請しました。この機械を導入することにより商品及びケースにQRコードを印字し、QRコードより商品購入ができる販売体制を構築しました。
また、ものづくり補助金を活用して、近々テスト加工機を導入予定です。新しい工具の開発を考えていて、バニシングドリルは鉄に使えないのですが、それを鉄・ステンレスに使えるものを開発したいと思っています。
↑「刃具管理の見える化」の説明の様子。
「お客様の工具の使用状況がわかると、次の納品のタイミングが分かります。こちらもお客様も計画的生産ができます。工場ラインを止めることが一番怖い損失です。工具の在庫管理システムと即時納品はそれを食い止めることができます」と坂本さん
自社の強み・弱みの棚卸ができた
―補助金を実際に活用してみた結果、よかったことについて教えてください。
普段、日常業務に忙殺されて、将来についてじっくり考えたりすることはなかなかできないのですが、補助金申請に向けて事業計画を作成するにあたり、将来展開についてのビジョンを考えることになります。考えが甘いと叱咤されることもありますが(笑)、会社の経営ビジョンを考えるきっかけになります。補助金という目標に向かい、強み、そして弱みを棚卸することができるいい機会だと思います。
↑坂本精工株式会社には、「※八尾市ものづくり達人顕彰」を受賞された方が働いておられます。
(※八尾市ものづくり達人顕彰…八尾市内製造事業所における優れた技術・技能者を「ものづくりの達人」として表彰することにより、これらを広く社会に周知し、技術・技能の継承と向上を図り、八尾市産業の活性化に資することを目的に実施されている)
補助金など、もらえる会社ではないと思っていた
―補助金を検討されている方へのアドバイスや一言、メッセージを頂けますでしょうか。
ビジョンを描くこと、行動することが大事だと思います。
サポートセンターの紹介を受けた時、最初は「うちはそこまでの会社じゃない」、ましてや補助金などもらえる会社ではないと思っていました。
でも、お話をし、会社内もくまなく見てもらい、叱咤激励され支援を受けていく中で、自社の強み弱みを知り、課題を一つ一つ解決していき、補助金の申請書が完成し、ついには採択までされました。これは大きな自信となりました。
なので、行動に移すこと、ビジョンを描くことが大事だと思います。
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