活用された方の声
VOICE

「アベルブラック」という独自の技術を確立し、展開しているアベル株式会社様。
多くの取引先を抱える、創業56年を迎えた町工場が、新たな挑戦のためにどのように補助金を活用されたのか伺いました。
DX化に取り組む、町工場。
─ アベル株式会社様のされている事業内容や活動について教えていただけますでしょうか。
ステンレスの表面処理を行っている会社です。塗装やメッキなど、ステンレスに色をつける方法はいろいろあるのですが、酸化皮膜を厚くすることでステンレスを黒くする技術を開発し、「アベルブラック」と名付けて展開しています。ステンレスは塗装をしても、剥がれてくるのが難点だったのですが、それをなんとかできないかということで開発したのが「アベルブラック」なんです。ステンレスの上に違うものをのせているのではなく、一体化しているので、加工をしても剥がれないのが特徴です。
─ 補助金活用のきっかけを教えていただけますか。
もともと八尾市さんとの関わりが多く、私が「みせるばやお」の会員だったり、八尾市の産業振興会議にも参加させていただいたりしているので、八尾市の施策はよく知っていたのですが、そんな中で、補助金の事をご案内いただき、知りました。
─ 今回の補助金を、具体的にどのように活用されたのでしょうか。
社内のDX化を進めるために活用させていただきました。町工場は、基本、紙を使っての情報伝達が主流なので、DX化に取り組むというのは、なかなか大変なところがありまして。ペーパーレスにしようといっても、業務が重なり、「無駄をなくしているつもりでも、なくなっていない」ということが多く、それを改善しなければならないと思っていました。コロナ禍で、業務を見直す時間はできたものの、DX化を社内のメンバーだけで行うのは難しかったので、外部の業務改善コンサルの方にお願いすることにしました。そんな時に補助金を知り、利用できるのか伺ったところ「ぜひ使ってください」とのことでしたので、活用させていただき、現在実施している最中です。
─ やはり、紙でのやりとりが多いのですか。
そうですね。私たちは製造業なので、加工指示書というものを発行するのですが、さまざまなお取り引き先様があるので、発行する加工指示書の形もさまざまなんです。なので、システム化しようにもしきれない状況なのですが、それを解決するためには、それぞれの価値観を統一する必要があると考えています。ヒアリングする項目を統一したり、なにをしなければならないかという「共通項目」を見つけたり。そういうところからスタートしなければならないと思っています。
加工指示書などのDX化をはじめている。
持っている情報を、効率的に使う。
─ 実際に導入された設備を教えてください。
まずは顧客ベースを整えたいと思い、名刺管理ソフトを導入しました。名刺をスキャンするだけで管理できるので、過去に交換した1万2000枚の名刺をデータベース化し、整理しました。そうすることで、数年前に名刺交換した方々にもメルマガを配信したり、リニューアルしたホームページをお知らせできたりと、情報発信が効率的にできるようになりました。
名刺管理サービス。専用のスキャナーに名刺を置くだけで、取引先の情報をデータ化できる。
また、製造業のため、検査記録や作業記録を手書きで残しているのですが、過去に、情報を書いて残しているはずなのに、情報が引き継がれておらず、もう一度書かなければならないということがあるんです。それを電子帳票システム用いてクラウド上で起こしていけるような仕組みに変えていっています。エクセルの表をタブレット上で表示でき、直接入力できるだけでなく、過去のデータも見ることができるため、比較ができるようになりました。
電子帳票システム。
─ 社内で行っている取り組みを教えてください。
月に一度、外部のコンサルの方と、会社の責任者が集まり、加工指示書における共通項目を整理することを続けています。併せて、その後に、デジタル化するためのツールとして、最適なものを探しているところです。また、毎月3S(「整理」「整頓」「清掃」の活動のこと)チェックをやっているので、それで得た情報も使えるのではないかと思っています。
─ DX化を始めたことによる、具体的な成功例などあれば、教えてください。
電子帳票システムは実装したばかりなので、これからの作業効率化に大きな期待があるのですが、名刺管理サービスにおいては、導入したばかりですが、名刺を溜めなくなったので、業務効率が上がりとても役立っております。今まではメルマガを配信するまで、名刺の整理をするのに時間がかかっていたのですが、データベース化したことで、メルマガの内容を考えることに時間が使えるようになりました。また、展示会等の大きなイベントでは、かなりの数の名刺を交換するため、その後のメールをお送りしたり、返信したりする作業に一週間ほどかかっていましたが、作業時間を短縮できるようになりました。 また、外部コンサルに入っていただいたことで、自分たちでは気づけなかった効率の悪い点などを指摘頂き、客観的な指標が生まれたと思います。
中長期的に考える。
─ 補助金を検討されている方にアドバイスをお願いします。
何かやろうと思った時、八尾市は日頃から会社を見てくれているので、尋ねれば、その会社にあった提案をしてくれます。たとえ補助金が採択されなかったとしても、他の案を提案してくれると思います。 なので、何か新たなことを始める場合は、まずは八尾市に(笑) コロナ禍で中小企業の経営環境が厳しくなり、設備投資などの前向きな投資が難しい状況ですが、直近ではなくもっと先を見れば、中小企業は必ず世の中に必要とされるし、されるという思いがないと続かないと思っています。中長期で考えた時に必要だと思うものは積極的に取り組んでいくべきだと考えています。そういう思いをもっているみなさんと進んでいけば、これからも日本がどんどんよくなっていくと思っています。 この補助金がそんなきっかけになればと思います。
インタビュー当日には八尾市長も来訪。町工場のものづくりについてお話しされ、工場見学も行われた。
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