活用された方の声
VOICE


町工場が実現した自社ブランド新商品開発
有限会社多葉刷子工業所
代表取締役 多葉 宣宏さん
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大阪府八尾市の地場産業である「歯ブラシ」をつくり続けて70年以上。

小さな町工場でありながら「ものづくり」に拘り、日々製造技術・品質向上に取り組んでおられる多葉刷子さんがどのように補助金を活用されたのか、詳しくお聞きしました。

 

 

―貴社の業種内容、活動について簡単に教えて頂けますでしょうか?

歯ブラシ製造業で、オーラルケア製品の※OEM生産を行っています。

植毛作業については祖父の時代から70年強やってきており、今では梱包作業まで可能となっています。

2019年から自社商品(小型犬用歯ブラシ)の販売を開始しました。現在OEMとの二本柱でペットの健康寿命を延ばすためオーラルケアを中心にイベントなどで啓蒙活動も行っています。

(※OEM:Original Equipment Manufacturing 他社ブランドの製品を製造すること)

 

―今回、補助金を活用して行われた事業が、「ワンちゃん用の歯磨き粉の開発」とのことですが、開発のきっかけは何だったのでしょうか?

家族の飼う犬の口臭がきっかけです。

人と同じく、犬も加齢にともなって歯周病の発生率が増加します。

犬が歯周病になると、歯石除去や抜歯処置のために、全身麻酔が必要となり、犬の身体にとっても、また費用の面でも負担が大きくなるケースが少なくありません。

その状況をなんとかしたいという思いから、小型犬用のオーラルケアの開発を決めました。

徹底的に研究し尽くした

―開発のために、八尾市の※インキュベートルームに入られていたとお聞きしました

はい、2019年から2年間入居し、小型犬用ハブラシの開発のための研究をしていました。

ここで、市場調査に加え、産業技術研究所での耐久性の調査、獣医師・ドックトレーナーとの連携…、徹底的にエビデンスを集め、研究に研究を重ねました。

意欲ある補助金の存在もここで知りました。

昨年はワンちゃん用歯磨き粉で補助金を採択していただきましたが、その前年はECサイトの構築、更にその前年は特許取得のために採択していただきました。採択いただいた全てが新事業(犬用オーラルケア展開)のためのものです。

(※八尾市インキュベートルーム

…八尾市が運営する事業用スペース。新たに起業をされる方や、新事業への進出を目指す方を対象に、経験豊富なインキュベートマネージャーが支援を行う)

理想の素材との出会い

―開発まで、どのような点に苦労されましたか?

開発にいたるまで1年以上はかかりました。

歯磨き粉の製造販売許可書は持っているものの、製造技術がありませんでした。また、うがいができない犬のために飲み込んでも安全でかつ効果的な歯磨き粉の開発にも頭を悩ませていました。

そんな時、八尾市の職員さんからの紹介でバイオアパタイトという、天然由来の素材があると知り、その足でバイオアパタイトの会社がある滋賀県まで直談判に行きました。

100%天然の卵殻由来であるバイオアパタイトは、着色汚れや歯垢のもとを吸着除去します。当然研磨剤・発泡剤も不使用で安心です。この素材を使えばいよいよ商品開発ができる!と確信しました。

こうやってようやく理想の素材に出会えたのも、インキュベートルームに入居し、研究を重ね、様々な方との繋がりが持てたからです。

 

↑質感はペーストとジェルの中間タイプ

↑一見歯磨き粉に見えないオシャレなデザイン。

多葉刷子工業所は化粧品の製造・販売の許可も取得している。

 

―ミガケンデ、ネーミングが面白く、わかりやすいですよね

ありがとうございます。

開発からメンバーに入ってもらっているデザイナーさんの奥さんが名付けてくれました。MADE IN OSAKA(八尾)なので大阪弁を活用したネーミングなのですが、大阪以外の人だと、わかってもらえないこともあり、むしろ「磨けない」という意味合いに捉えられることもあります。

でも、説明する機会や話のネタになるので、このネーミングで良かったと思っています。

↑ミガケンデシリーズ

統一・洗練された商品パッケージとなっている

いただいた貴重な意見を商品に反映していきたい

―ミガケンデシリーズ、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?

「オーラルケアから健康寿命を延ばしたい」をコンセプトに新商品の開発や、現商品のブラッシュアップを行っていきたいです。

また、イベントや啓蒙活動を通じて、利用者から数々のご意見をいただいたので、それを商品にフィードバックしていきたいです。

↑徹底したチェック体制での製造を行っている

実現不可能だった事を具現化できた

―補助金を実際に活用してみた結果、よかったことについて教えてください。

決して弊社のような中小企業、町工場だけでは実現不可能だった事を具現化できたことです。

研究に没頭できる施設があり、アドバイスやサポートをもらえ、理想の素材を扱う会社を紹介いただいたこと、そしてなにより新製品開発にはお金もかかってきます。今回だと歯磨き粉の販売に向けての市場調査に費用がかかりました。

資金補助があったので、実現不可能だと思っていた新事業展開ができたと思います。

 

―補助金を検討されている方へのアドバイスや一言、メッセージを頂けますでしょうか。

補助金申請は複雑な物だと二の足を踏んでいる方も多いようですが、意欲ある補助金は申請が初めての方でも取り組みやすいのではと思いますし、もしわからないことがあれば八尾市やサポートセンターの方が丁寧に教えてくれます。私も根掘り葉掘り聞きました。なので躊躇せず、活用するべし!と思います。

Profile

有限会社多葉刷子工業所
代表取締役
多葉 宣宏さん
創業73年。歯ブラシの地場産業地である八尾市にてオーラルケア製品のOEM生産、自社ブランド犬用歯ブラシMIGAKENDEの製造・販売を行う。
高品質で安心な商品作りに注力し、2019年には大阪ものづくり企業賞2019(匠)を受賞。

https://tababrush.com/