プロデューサー

塚本 カナエ 氏

心中する覚悟がないと、「ものづくり」なんてできない。

塚本 カナエ 氏

業種や規模や国籍を問わずさまざまな企業とタグを組み数多くのデザイン・プロデュース事業で成果をあげてきた塚本氏。「ありそうでなかった」魅力的な商品を世に出した背景には揺るぎない「ディレクション愛」と「チーム」の力があった。企業とプロデューサーが同じ方向を目指して取り組むこと。それが、win-winの関係を築くデザイン・プロデュースの条件だ。

「いいものをつくる」という思いを共有し チームとなってプロジェクトに取り組む。

デザイン・プロデュース事業で大切なことは何ですか?

企業とプロデューサーが「いいものをつくる」という思いを共有し、チームとなって取り組むことです。誰に売るのか、予算はいくらか、技術力や営業力など会社の総合力もデザイン与件になるから、お互いの気持ちがバラバラだと事業は成功しません。だから私は、企業とのミーティングでは深い部分まで掘り下げて話し合いますし、工場にもよく出向いて職人さんにお目にかかり製造工程を一つひとつ確認したりしています。

両者が目指す「いいもの」とは何でしょう。

商品にもよりますが、やはりちょっと新規性があるものですね。「ありそうでなかった」「こういうものが欲しかった」というものです。難しいのは、この「ちょっと」のさじ加減。似たようなものでは興味を持ってもらえないけれど、発想が飛びすぎてもいけない。だから、常にユーザー目線のものづくりを意識しています。どんなに自分たちがいいと思っても、ユーザーに受け入れられるとは限りませんから。

つくり手の自己満足ではいけないのですね。

当たり前のことのようですが、大変な部分もあるんですよ。企業としては「あれもやりたい」「これもやりたい」と欲も出てきますし、改良を求めたら「もうこれでいいじゃないか」と言われることもあります。でもそれは「ユーザー目線」ではない「会社都合」なんですね。そこで妥協してしまうと「いいもの」はつくれません。

企業にとったら耳が痛い話です。

私も企業の事情がわかりますから、言いにくい時もあります。でも一番大切なのは「いいものをつくる」という目的を達成すること。それって「ディレクション愛」なんですね。お互いがそこを共有できていれば、NOと言う勇気も出るし、言われたほうもなぜNOなのかわかる。そこで納得できるから「もう一度やろう」と頑張れるんです。

塚本 カナエ 氏

ものづくりは「人間対人間」。 相乗効果で、より大きな成功を目指す。

デザイン・プロデュース事業はプロデューサー主導で展開していくのですか?

プロデューサーの役割は全体を指揮していくことですが、事業の主役はあくまでも企業です。プロデューサーに言われてやるのではなく、自分たちがつくるのだという自覚を持ってほしいですね。特に経営者の方は覚悟をもって事業に臨んでいただかないと、新しいものづくりはできません。

企業にはどのような姿勢が求められるでしょう。

企業は、経験や技術や専門知識を持っているプロ集団です。プロデューサーも企業も、それぞれがプロの立場で自分の持てる能力を惜しげもなく出していかなくちゃいけない。でも、そこで力を合わせたら1+1が3にも4にも5にもなっていく。相乗効果で素晴らしいものが生まれるんです。

ただ、企業にもできることとできないことがあると思います。

もちろん、これが原因で経営が傾くようなことがあっては本末転倒ですからね。私、「半歩だけ」って思うんです。どんなにやりたくてもハードルが高すぎたら無理だし、かといって、できる範囲のことしかやらなかったら成長できません。だから、企業の総合的な力を考えて、あと半歩だけ頑張れば何とかなるかな、というところを最終的には目指しています。でも、その半歩だって、企業にとったら実は苦しいんですよ。

その苦しいところを乗り越えて成功するために大切なことは?

やっぱり「気持ち」ですね。モチベーションの維持も含めて。私はこれまで多くのデザイン・プロデュース事業を行ってきましたが、ものづくりって「人間対人間」なんです。だから、気持ちをひとつにみんなで努力して、みんながwin-winの関係になるように事業をプロデュースしていきたいと思っています。できるだけ多くの成功を、みんなで分かち合えるように。


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