羽場 一郎 氏
成功の鍵は、プロデューサーを振り回すほどの情熱。
デザイン・プロジェクトの使命は企業の良さを人々に伝えるものづくりを行うこと。
エポックメイキングなものづくりも、話題を呼ぶ仕掛けも企業の熱意がなければ生まれないと、羽場氏は言う。
「下請けから脱したい。でも何を変えたらいいかわからない」
答えは、企業の中にある。
経営者と社員のエネルギーが
プロジェクトの原動力になる。
デザイン・プロデュース事業におけるプロデューサーとは?
企業の良さを市場につなぐのがプロデューサーです。商品がつくられる根本には企業理念や文化がありますから、まずその根本を見つけ出し、経営資源を見極めた上で、その特長が活かせる市場を考える。そうすると、どんな商品をつくるべきかが見えてきます。
プロデューサーのアイデアでものづくりを行うのですね。
新しい視点やアイデアは、プロデューサーとして欠かせません。でも、プロデューサーはあくまでも事業をサポートする立場です。私がこれまで携わった事例でも、経営者の情熱や社員の意欲が事業成功の大きな力になりました。
「ありえない提案」のメリットとリスク管理。
参考になる成功事例を教えてください。
大手メーカーが大きなシェアを占めるメンズソックス市場で、シェア4番手のメーカーと商品開発を行ったことがあります。その時は海外のブランドとライセンス契約を結び、48色のソックスを展開しました。結果は、発売から3年で250万足の売上。この市場では大きな成功をおさめました。
メンズソックス48色とは、注目度も高そうです。
この商品は若者に人気のファッションビルで大々的にディスプレーされ、それも話題になってブレイクしました。ただ48色のカラーバリエーションも最終的には4色ほどに絞り込まれ、コンビニでも販売される手軽な商品になっていきました。
紆余曲折を経ながらも成功した理由は何ですか?
まずメンズソックス48色展開というリスキーなアイデアにGOを出した責任者の決断力と情熱です。リーダーとして社内を説得しチームをまとめながら事業を進めていくのは、相当なエネルギーが必要だったでしょう。でも、そういう方がおられたから事業は成功したんです。
リスク管理も大変だったのではないでしょうか。
売れる色は限られてくるだろうという予想は当初からありました。それで、全色をまんべんなく作るのではなく、売れる色だけ追加生産できるように、製造工程や糸の仕入れをうまく調整したんです。これは、製造に携わる人たちの創意工夫が大きかったですね。
先を見通す長期的な戦略も必要ですね。
新製品を作って終わりではなく、ユーザーの反応を見ながら改良を重ねて、商品を新しいステージへ導いていくやり方もあります。そうすると、たとえ最初に失敗してもダメージは小さくてすみますし、人々に求められ社会に貢献できる商品へと成長させることができます。
トップリーダーに見る八尾市のポテンシャル。
八尾市の企業にはどんなイメージを持ちですか。
長年トライ&エラーを繰り返りながら道を切り開いてこられた企業さんです。経営者の方々は、失敗を恐れず挑戦する勇気と情熱、さまざまな意見に耳を傾ける謙虚さと真剣さを持っておられる方が多い。これは、新製品開発ではとても重要なことです。
そういった方々と協働する魅力は何ですか?
「熱」のある人と接すると、こちらもどんどん熱っぽくなり、やがて企業全体が熱っぽくわきあがっていく。そうすると、すごいパワーのものが生まれるんです。プロデューサーを振り回すくらいの情熱があっていい。そんなものづくりのお手伝いができたら、プロデューサー冥利に尽きますね。