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レポート

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2024-03-04八尾あきんど起業塾・受講生の声 vol.18

八尾あきんど起業塾2023 ~出発編~ 受講生
藤原 亮介 さん  令和56月 「80831(ヤオヤサイ)」を開業

●開業のきっかけ
 自身が子どもの頃、夏休みの早朝に父親と近所を散歩しながら、いちじく農家の作業小屋でいちじくを買って食べた時のあの味が忘れられず、年々いちじく畑が宅地に変わっていくことに疑問を感じ、農業の世界に興味を持ち、大学院の博士課程では「都市地域での市民参加型農業」をテーマに研究していました。
 その後は行政の農業職に就き、普及指導員として勤務していましたが、新規就農者の支援をしたいと考えていた自分にとって、公務員には限界があると感じるようになりました。というのも、新規就農者の課題は、売り先がない、時間がない、繋がりがない、という3つの「無い」ですが、特に「売り先がない=販路支援」については、公の立場では支援しきれないもどかしさを感じていたためです。加えて、役所は異動に伴い担当が交代し、引き継ぎはするものの、農業者との信頼関係や「魂」までは引き継げないことから、伴走支援しづらいという問題もありました。
 地域的にも、大阪農業では特に大和川より北側の地域に課題がありました。南河内、泉州地域などと異なり、JAの出荷組織や集荷場がなく、農家が自ら市場に出荷に行ったり、直売所をはしごして野菜を持ち込み、委託販売で手数料を取られた上で、さらに売れ残りを夕方に引き取りにいかなければならないという現状がありました。代々農業をしている家であれば家族のサポート等でなんとか成り立ちますが、特に一人で始める新規就農者にとっては大きなハードルになっていると感じました。
 役所の立場に対する疑問と、地域の農家が抱える課題に対する思いが年々大きくなってきたところ、コロナ禍で農業の担当から離れ、農業振興を俯瞰的に見る機会がありました。「オレ、何やってんねやろ??役所はオレがいなくても代わりがいくらでもいる。オレにしかできひんことをせな!」
 令和4年の2月から転職活動を始めてまもなく、八尾に本社を持つ印刷会社が、新規事業でオーガニック野菜の販売を検討しており、その業務を担える人材を探していることを、人づてに聞きました。
 その求人へ応募したところ、採用され、転職することになりました。こちらの会社で、上記のような農家の売り先がない、時間がない、繋がりがない、を解消するため、生産者の所へ行って買い付けて、時間や売り先の確保をする、移動販売や宅配により、生産者と消費者を繋いでJA以外の販路を作る、売れ残りに関しては、加工や飲食への卸により、地元の飲食店でいいものを使ってもらえるように進める、といった活動をゼロからスタートしました。その先には、オーガニックを身近に安く買えるように、八尾をオーガニックのまちにしたいという想いもありました。この活動を進めていくうちに、会社からの提案もあり、この事業で独立・起業することとなりました。

八尾あきんど起業塾を受講した理由
 会社から独立することになったことで意思決定が早くなった一方、1人なので相談相手が必要だと感じるようになりました。そのタイミングで、市の職員の方に無料で経営相談ができる八尾市立中小企業サポートセンターや、インキュベートルームについて教えていただき、早速活用させていただきました。ちょうどその頃に、八尾あきんど起業塾の存在も知ったため、横の繋がりを作りたいという想いもあったことから、受講することに決めました。

受講して良かったこと
 やりたいことを、いろいろな側面から体系立てて見直すことで、自身の事業内容を整理できたように感じています。特にアイデアワークでは、たくさんの受講生と話す機会をいただき、お互いにプランをブラッシュアップすることができたため、自身が求めていた「横の繋がり」も作ることができたように感じています。また、自身が事業をすでに初めていた段階だったため、平日夜が中心の時間設定も有難かったです。
 また、発表会においては、自身のプランに対して、聴講された方から助言や協業の提案などをいただける機会があるのですが、実際に協業に繋がった事例もあったため、有難かったです。

さらに改善してほしいこと
 カリキュラムの前半はインプット機会としての講演が中心だったのですが、最初にアイデアワークなど、他の受講生と関われるメニューが一つあれば、もっと早期から受講生同士の交流が生まれやすかったかもしれません。平日夜に開催されるカリキュラムが中心だったため、特に前半は、カリキュラム後は皆さんすぐに帰っていたように記憶しています。

開業から現在までの状況
 活動状況としては、毎週火・木は宅配、水・金は移動販売、土・日はイベント販売などを実施しています。宅配事業では、ECサイト「どっこい市場」を通じて、「八尾周辺の本当に美味しいオーガニック野菜」をセットにして販売しています。また、移動販売事業では、八尾・藤井寺・松原・平野区において、マルシェ出店や定期販売を実施し、「生産者の想いを顧客に、顧客の声を生産者に伝える」コミュニケーションを大切にしています。
 また、移動販売に関しては、他店舗の前に出店させていただく機会が増えてきました。飲食店さんや小売店さんなど、いろんな業種のお店にとって、相互集客のメリットを提供できるのではないかと感じています。地産地消を大切に考えているため、近隣市町村から始めています。
 そして、日常的に地元の野菜を買ってもらうメリットを打ち出せるよう、新事業として、生産者と消費者が繋がり・学び・食し・体験し・買える「場」を作ることを考えています。

開業前にやっておけばよかったと思うこと
 起業塾に関して言うと、プランを固める目的のカリキュラムのため、昨年度に受講していれば、さらに効果的だったかもしれません。また、これはやっておいてよかったことになりますが、簿記の勉強や確定申告については役所時代に学んでいたため、開業後に役立ちました。

これから開業される方へのメッセージ
 どれだけシミュレーションしても、練習しても、やってみないとわかりません。実際にチャレンジすることに価値があると思います。私も実際にやってみましたが、行政に勤めていた頃は見えなかった視点や出会えなかった人たちがたくさんいて、収入は激減しましたが、間違いなく人生は充実しているため、1歩踏み出してよかった、と感じています。

「八尾あきんど起業塾」についてはこちら

80831(ヤオヤサイ)さんのECサイト「どっこい市場」はこちら

写真1
藤原 亮介 さん

写真2
ECサイト どっこい市場

写真3
野菜セット

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